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【AIニュース】中国Z.aiの「GLM-5.3」が最強コーディング性能を主張、GoogleはGemini 3.7 Flashを半額投入、EUの透明性義務がついに施行

中国Z.aiが「GLM-5.3」を投入し、同じ土台のモデルを鍛え直すだけでコーディング性能を大きく伸ばした。同じ週、Googleは低価格の新モデル「Gemini 3.7 Flash」を公開し、EUでは生成AIの透明性を義務付ける規則がついに施行された。

今週は、モデルの「賢さ比べ」だけでなく、「同じ土台をどう鍛え直すか」と「使う側にどう名乗らせるか」という、一段階進んだ論点が目立った週だった。中国発のオープンモデルが再学習なしで性能を底上げし、Googleは低価格モデルで実務層を狙い、EUではAIであることを明かす義務がいよいよ現実の締め切りを迎えた。

Z.aiの「GLM-5.3」、ベースモデルを変えずにコーディング性能を大幅強化

中国のAI企業Z.aiは8月14日、最新モデル「GLM-5.3」を発表した。注目すべきは開発の進め方だ。前バージョン「GLM-5.2」と同じ7430億パラメータ(AIが学習した知識量の目安)の土台モデルをそのまま使い、性能向上のすべてを「ポストトレーニング」(学習済みのモデルを、追加の訓練データや強化学習で仕上げる工程)から引き出したという。土台を作り直さずに済むぶん、開発コストを抑えながら能力を伸ばせるのが利点だ。

効果は特に、長い手順を要する作業で顕著だった。ターミナル操作を通して複雑な課題をこなす力を測るベンチマーク「Terminal-Bench 3.0」のスコアは、4.6点から28.3点へと大きく伸びている。あわせてサイバーセキュリティ関連の能力も、Z.ai自身が「想定より速いペースで伸びた」と認めるほど向上した。同社はGLM-5.3を、中国DeepSeekの新モデル「V4 Pro」やMoonshot AIの「Kimi K3」、OpenAIの「GPT-5.6 Sol」と直接比較する形で発表しており、オープンウェイト(モデルの中身を公開する方式)勢の競争がさらに激しくなっていることをうかがわせる。なお、実際のモデルの重み(中身のデータ)の公開は、安全性の評価と対策が終わる約2週間後を予定しているという(MarkTechPostの報道より)。

実務上の示唆

  • コーディング支援AIの選定を進めている場合、ベンチマークの伸び幅だけでなく、自社が扱う実際のコード規模や言語での挙動を検証してから採用を判断したい
  • 土台を再学習せずに性能を伸ばす手法が実用段階に入ったことは、今後さらに短い間隔でモデルが更新される流れを示す。追随できる評価体制を整えておく価値がある
  • 重みの公開が安全性評価を理由に遅れる事例が増えている。オープンウェイトモデルを自社基盤で動かす計画がある場合は、公開時期に余裕を持たせたスケジュールを組みたい

EUの透明性義務「第50条」が施行 チャットボットも生成画像もAI由来を明示

EUのAI規制法(AI Act)のうち、透明性義務を定めた「第50条」が8月2日から適用開始となった。対象は、高リスクに分類されるかどうかにかかわらず、人と直接やり取りするチャットボットや音声アシスタント、画像・動画・音声・文章を作る生成AI、感情を読み取るAIシステム、偽の映像を作る「ディープフェイク」ツールなど幅広い。義務の中身は主に4つだ。1つ目は、相手が明らかにAIだと分かる場合を除き、利用者に「AIと会話している」ことを伝えること。2つ目は、AIが作った画像や音声、文章に、機械が読み取れる形の目印を付けて、AI生成物だと検出できるようにすることだ。

違反した場合の制裁は軽くない。最大1500万ユーロ(約24億円)か、全世界売上高の3%のいずれか高い方が科される。すでに市場に出ている生成AIについては、目印を付ける義務だけ12月2日まで猶予期間が設けられているが、それ以外の義務は施行日からただちに適用される(Cooleyなどの解説より)。

実務上の示唆

  • EU域内の利用者にチャットボットや生成AIサービスを提供している場合、AIであることの表示や生成物への目印付けが実装済みか、法務部門と早急に確認したい
  • 「高リスク」に分類されないAIシステムも対象になる点は見落としやすい。社内で使うカスタマーサポートAIや議事録要約AIなども対象に含まれないか棚卸ししておく必要がある
  • 猶予期間がある義務とない義務が混在しているため、対応の優先順位を整理し、12月2日の期限に向けたロードマップを早めに作っておくとよい

Googleが「Gemini 3.7 Flash」を投入 前モデルの半額でコーディング性能も向上

Googleは8月13日、軽量モデルの最新版「Gemini 3.7 Flash」を公開した。わずか3週間前に出したばかりの「Gemini 3.6 Flash」からの短い間隔での更新となる。コーディング関連のベンチマークでは、実際に動かせる完成度の高いコードを一発で生成する精度が向上しており、「FrontierCode 1.1 Main」では34.4%から43.6%へ、「DeepSWE v1.1」では49.0%から65.3%へとスコアが伸びた。

価格面でも積極的な設定だ。2026年内は入力100万トークン(単語や文字の断片を数える単位)あたり0.75ドル、出力100万トークンあたり3.75ドルという導入価格が適用され、これは前モデル発売時の半額にあたる。2027年1月からは通常価格の1.50ドル・7.50ドルに戻る予定だ。この投入の背景には、上位モデル「Gemini 3.5 Pro」の発売延期が長引いている事情がある。Googleは軽量モデルの改良を先行して積み重ねることで、主力モデル待ちの間も開発者をつなぎ止めようとしている構図がうかがえる(Bloombergの報道より)。

実務上の示唆

  • コーディング用途でコストを抑えたい場合、上位モデルの発売を待たず、期間限定の値下げ価格が適用されている今のうちにGemini 3.7 Flashを試す価値がある
  • 3週間という短い間隔でのモデル更新は、他社でも同様のペースが常態化しつつあることを示す。API連携部分は、モデル名の切り替えに対応しやすい設計にしておきたい
  • 導入価格は2027年1月に上昇する予定のため、長期利用を前提にコストを試算する際は値上げ後の単価も織り込んでおくと予算計画のずれを防げる

まとめ

今週のニュースを並べると、AI業界の競争軸が「誰が一番賢いか」から「誰が一番速く、安く、正直に届けられるか」へと広がってきたことが見える。GLM-5.3は、土台を作り直さなくても性能を伸ばせることを示し、開発の効率化競争に新しい形を持ち込んだ。Gemini 3.7 Flashの値下げは、上位モデルの遅れを補いながらも実務層のユーザーをつなぎ止めようとするGoogleの姿勢を映す。そしてEUの透明性義務は、性能や価格の競争がどれだけ激しくなっても、利用者が「相手がAIかどうか」を知る権利は別枠で守られるべきだという線引きを、具体的な締め切り付きで突きつけた。速さと安さを競う技術の進化と、それを使う側の信頼を守る仕組みづくりが、同じ一週間の中で並走している。