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【AIニュース】Anthropicのエージェント基盤がGA、Hugging Faceは1.3兆円規模の身売り観測、TwitchはAI学習利用で集団訴訟に

Anthropicがコンピュータ操作・ブラウザ操作・Skills API・Files APIを正式リリースしエージェント基盤を本番運用フェーズへ引き上げた。一方でHugging Faceには1.3兆円規模の身売り観測が浮上し、AmazonとTwitchは配信者のコンテンツを無断でAI学習に使ったとして集団訴訟を起こされた。

今週は、AIを実際の業務に組み込む側の「基盤づくり」が進んだ一方で、そのAIを学習させるためのデータをめぐる摩擦が改めて表面化した週だった。Anthropicはエージェントが実務で使うための一連のツールを正式版に格上げし、Hugging Faceには巨額の身売り観測が浮上、そしてAmazonとTwitchは配信者のコンテンツ利用をめぐって集団訴訟を起こされている。それぞれの動きを見ていきたい。

Anthropic、コンピュータ操作・ブラウザ操作・Skills API・Files APIを一斉にGA化

Anthropicは8月19日、Claude Platform上のコンピュータ操作(computer use)、新しいブラウザ操作ツール、Skills API、Files APIをまとめてベータ版から正式版(GA)に格上げしたと発表した。いずれもエージェントが実際の業務システムを操作するために欠かせない機能で、同じ日に足並みをそろえて正式リリースされた点が目を引く。

何が変わったのか

  • コンピュータ操作: 画面のスクリーンショットをもとに、人がキーボードやマウスを操作するのと同じようにクリック・入力・スクロールを行える機能。1ターンでクリックや入力、スクリーンショット取得など複数の動作をまとめて実行できるようになり、早期導入企業では1タスクあたりの往復回数が20〜40%減ったという
  • ブラウザ操作ツール: 画面上の座標だけでなく、ページの構造情報そのものをClaudeに渡す仕組みになり、見た目のピクセル情報に頼る自動化より安定してWebアプリケーションを操作できるようになった
  • Skills API: チームの業務手順を一度アップロードすればバージョン管理でき、リクエストごとに特定のバージョンまたは最新版を指定して呼び出せる
  • Files API: アプリケーションがドキュメントをアップロードし、会話の中で参照できる仕組み。保存したファイルに有効期限を設定できるようになり、コンプライアンス上の要件にも対応しやすくなった

Skills APIとFiles APIはMicrosoft Foundry経由でも利用可能になっており、更新版のコンピュータ操作・ブラウザ操作ツールもGoogle CloudのVertex AIへの対応が予定されている。特定のクラウド一社に閉じない形でエージェント基盤が広がっていく流れが見えてくる。

実務上の示唆

  • これまでベータ版として試験導入していた企業は、SLAや料金体系が正式版のものに切り替わっていないか確認しておきたい
  • ブラウザ操作の安定性向上は、Web上の定型作業(申請フォームの入力、社内ポータルの操作など)を自動化する際のROIを見直す好機になる
  • Skills APIによるバージョン管理は、エージェントの挙動を本番環境で再現・監査する上での土台になる。手順書をAPI経由で管理する設計を検討する価値がある

Hugging Face、1.3兆円規模での身売りを検討との報道

「AI版GitHub」とも呼ばれるHugging Faceが、評価額130億ドル(日本円で約1.3兆円)以上での売却について複数の買い手候補と協議しているとTechCrunchなどが報じた。これが実現すれば、2023年にSalesforce VenturesやAlphabet傘下のGVなどから調達した際の評価額45億ドルからほぼ3倍の水準となる。

Hugging Faceは開発者や研究者がAIモデルやデータセットを共有・検索・試用できるプラットフォームとして、オープンソースコミュニティの中心的存在になってきた。年間売上高は1億ドルを超える規模とされるが、具体的な数字は公表されていない。現時点でどの企業と交渉しているのかは明らかになっておらず、買収が成立するかどうかも不透明だ。共同創業者のクレマン・デランゲ氏がこれまでコミュニティに対する責任について繰り返し言及してきた経緯もあり、身売りが本当に実現するのか懐疑的な見方も出ている。

もしこの買収が成立すれば、オープンソースAIのエコシステムを支えてきた中立的なハブが、特定の大企業の傘下に入ることを意味する。モデルやデータセットのホスティング方針、利用規約、コミュニティとの関係がどう変化するのかは、Hugging Faceを日常的に利用している開発者にとって無視できない論点になるだろう。

AmazonとTwitch、配信者のコンテンツ無断AI学習利用で集団訴訟に

Twitchとその親会社Amazonが、配信者数百万人分のコンテンツを本人の同意や対価なしにAIモデルの学習に利用したとして、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に集団訴訟を起こされた。訴状は8月20日付で、原告はコネチカット州在住のTwitch配信者ウォーレン・パンディシア氏。

発端は今月Twitchが全クリエイターアカウントに「生成AI向けトレーニング」設定を追加していたことだ。この設定をオンにすると、ライブ配信やアーカイブ動画、クリップ、チャットメッセージ、画像、テキストがTwitchとAmazonによるAI学習に利用される。当初はデフォルトでオンになっており、批判を受けてオプトアウトの選択肢が後から追加された経緯がある。

訴状によれば、両社は正式なオプトアウト機能が存在するより前の2024年の時点からすでにコンテンツの収集を始めていたとされる。訴訟の核心にあるのは、いったんAIシステムに取り込まれたコンテンツは「取り戻せない」という主張だ。さらに、オプトアウトがチャンネル単位で設定される仕組みのため、自分のチャンネルではオプトアウトしていても、オプトインしている他人のチャンネルに出演したりチャットで発言したりすると、そのやり取りが収集対象になってしまう。これでは会話に関わった全員から同意を得ることが構造的に不可能だと訴状は指摘している。

実務上の示唆

  • ユーザー生成コンテンツ(UGC)を扱うプラットフォームがAI学習への利用を組み込む際は、既定値をオプトインにするかオプトアウトにするかが後々の法的リスクを左右する
  • チャンネル単位・アカウント単位でオプトアウトを設計すると、複数人が関わるコンテンツ(チャット、コラボ配信など)では同意の取得漏れが構造的に発生しうる。第三者が写り込む・映り込む形式のコンテンツでは特に注意が必要だ
  • 「学習済みモデルからデータを取り除けない」という主張は今後の同種訴訟でも繰り返される論点になりそうで、モデルのアンラーニング技術や学習データの出所管理がより重要な論点になっていく可能性がある

おわりに

エージェントを本番環境で動かすための基盤が着実に整備される一方で、その裏側にあるデータ調達や企業の資本構成をめぐる動きも同時並行で進んでいる。AIの「使い方」を支えるインフラと、AIを「作るための材料」をめぐる摩擦は、今後もセットで報じられていくテーマになりそうだ。

参考記事: